編集中だった文書の上書き保存が完了したのを確認して、中嶌は大晦日に漬けた胡瓜をつまみつつ、焙じ茶を飲む。梶原を帰してからもなんのかんのと口実をつけて入り浸っていた岡田もさすがに大晦日には実家に帰ってしまい、部屋は静かだ。
実家はさほど遠くはないものの、卒論を抱えて帰る気にもなれず、結局今年は初めて一人で年を越した。カップ麺でもそばはそば、と年越しに選んだコロッケそばはなかなか癖になりそうで、今度からときどき買ってみようかと考え始めている。
提出後落ち着いてから帰るとだけ伝えた実家には、電話で年始の挨拶を済ませた。初詣は自転車で十数分走った先の小さな社へ。初めて自分で一から出汁をひいて作った雑煮は、意外とうまくできた。大晦日に漬けた胡瓜もいつも通りに美味しい。
それにしても、といつもよりも余裕のある炬燵に足を入れたまま横になり、思う。いつも通りのようで、一人きりで過ごした日はさほど多くはなかったことに気づかされてしまい、つまるところたぶん、寂しいのだ。
(おっかしいなー……一人暮らしをしてたはずなんだけどな……)
ごろりと寝返りをうって、目を閉じる。
うとうとと微睡む耳に、遠く呼び鈴の音が聞こえた。
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本年もどうぞよろしくお願いいたします。