あるひのこと、ひろしくんはひこうきになりました。
ぶーんとたかくとびあがり、だんだん、ひろしくんのおうちがちいさくなってゆきました。
そのうちに、ひろしくんのすむまちもちいさくなってゆきました。
たかくたかくとびあがるうちに、ひろしくんは、くもまにはいりました。
「くもさん、こんにちは」
「こんにちは、ひこうきさん。どこまでゆくの?」
「もっとたかいところまでゆくんだ」
そのうちに、ひろしくんはくもをつきぬけてゆきました。
ひろしくんのすむまちははるかとおく、もうみえません。
そのうちに、ひろしくんはちきゅうをとびだしてしまいました。
あたりはまっくら、ここはどこなのでしょう?
こころぼそくなったひろしくんは、おうちにかえりたくなってきました。
「こんにちは、ひこうきさん。こんなところにきたひこうきさんは、あなたがはじめてだわ」
はなしかけてくれたのは、おつきさまでした。
「おつきさま、こんにちは。ぼく、たかくとんでいたらここまできてしまったんだ。どうすればおうちにかえれるんだろう?」
「それなら、いまからわたしがいうとおり、とんでみて。きっとあなたがかえれるみちだから」
「ありがとう、おつきさま」
おつきさまのいうとおりにぐるりとゆるいこをえがいてとぶと、とおざかっていたちきゅうが、またちかづいてきました。
そのうちにもういちど、くもまにはいりました。
「おかえりなさい、ひこうきさん。たかいところまでいってきたのかい?」
「ただいま、くもさん。おつきさまにごあいさつしてきたよ」
「それはよかった!」
そのうちに、ぐんぐんと、ひろしくんのすむまちがちかづいてきました。
ひろしくんのおうちが、だんだんおおきくみえてきます。
ぶーんとおうちにとびおりると、ひろしくんは、ひこうきからいつものひろしくんにもどりました。
「ただいま、おうち。ただいま、おかあさん!」
きょうもおうちには、ひろしくんのだいすきなさつまいものにおいがしています。
おしまい